電書13* 長嶋有『あいまいな吟行(+プラス)』

『ウフ.』(マガジンハウス)04年5〜10月号に掲載された「あいまいな吟行」の電書版『あいまいな吟行(+プラス)』全76句(差し替え、改作あり)+書き下ろし5句である。
 吟行というのは、どこかに行って俳句を詠むことだ。「あいまいない吟行」は、名所や自然豊かなところに行って詠む吟行のイメージとはちょっと違う。
 ばんごはんを食べながらわいわいと(連作だから選べないよね、全部選ぶよね、1章ぶんまるごと紹介したくなるよねとか言いながら) 米光とアライが選んだ句を紹介しよう。

part01.Interior shop
木椅子から長椅子みやる春日かな
(少し高い)この引き出しも空である


part 02.Midnight
春更けてぶらぶらさせる夜食かな
満足や髪洗うのは明日にする


part 03.Department store
すぐほめる店員は嫌ジュウシマツ
買いたいものなくて上昇する体


part 04.SUMMER JAM2004
つっぷしてケチャップ瓶の前である
サンダルを手にもっている人に風


part 05.extra class
夏服を褒めたりしない職種かな
先生が黒板の字を手で消した


part 06.A Walk with Dog in Woods
きた道を木いちご奇麗折り返す
舌だして犬また急ぐ秋の雷

 

 ブログでは、横書きになってるけど、電書版では、縦書き。
 サンプルひとつザッと作って長嶋さんにメールすると、俳句は文字数に関わらず同じスピードで読み終わるものということで長さの異なる句すべてを同じ縦幅で表記するのだという指摘をもらう。
(横にある攝津幸彦句集を見ながら)あ、ほんとだ!と驚く。「均等割り付け」なのか、俳句は。
 ぼんやりと見ていた。そうすると、そういった日本語の表記、細やかな仕草というか、繊細な活字、多彩な表記、微細な調整は、あたりまえのこととして受けとめて気にしていなかった。
 長嶋有の俳句を電書化するにあたって、じゅうぶんにそういった調整が何の気にもならないほど素直に伝わるレベルで表記できたとは、今回の電書では、残念ながら宣言できない。悪戦苦闘の跡が見えてしまうかもしれない。
 それでも、伝われば。伝わることが手渡せれば。


 電書版には、書き下ろしPart 06(.5) Bungaku free-ma 新作5句がプラスされた。あなたがこの電書を買うであろう文学フリマの情景が言葉になっている不思議。

以上、担当米光でした。

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