電書08平林久和『電子書籍時代の「あつかましい」文章教室』

阿佐ヶ谷ロフトAで「夜のゲーム大学」というイベントをやった。講座風エンタテインメントなイベント。米光は、そこで電書フリマの構想を話したのだった。イベントが終わった後、ゲームアナリストの平林久和さんが「電書フリマの考え方、すごく正しい。ぼくも参加させてください」と言ってくれた。
 ぼくが、電書フリマの成功を確信した瞬間だ。なにしろ平林久和さんは『ゲームの大學』の著者であり、『ゲームの大學』は、ぼくがゲームデザイナーとして悩んでいたときの指針となった本だからだ。平林さんの分析と予測の鋭さといったらなかった。妄信して猛進してしまいそうなパワーがあるのだ。
 ぼくにとってある種のバイブルである本を記した本人が「すごく正しい」と言ってくれたのだ。これほど心強いものはない。
 後日、平林さんと打ち合わせした。提案されたのは、こちらの予想の斜め上をいく企画。「音声データでやりたいんですよ」 電書と音声データを組み合わせたコンテンツを作りたい、と。内容は、電子書籍時代の文章教室。
「あつかましい」をキーワードにして、実践的な感覚と明快な解説で、文章を書くいくつもの難しいハードルを越える方法を教えてくれる。
 島崎藤村『夜明け前』の書き出し「木曾路はすべて山の中である」を引用し、“相当あつかましい”と言い放つ気持ちよさ。『1Q84』を「自分だったらこう書く」というあつかましい気持ちで読んでみようという提案。「怒り」を使って書く術。
 そして、むろんシンプルな文章教室だけで終わるはずがない。電子書籍時代が来ることで何が変わるか、表現がどう変わるか。どう「あつかましさ」を使えばいいのか。変化の時に対する思考法の手引きにもなっているのだ。
 音声は聞いてもらえれば、その威力がわかる。ささやくような声やニュアンス。たしかに文章だけでは伝わらない何かを伝える。電書と声の組み合わせの威力も、予想の斜め上をいってる。

以上、担当米光でした。

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